黒部ダムと富山の旅 その1

「黒部ルート見学会」に当選したので、黒部ダムを見てきた。
長野県と富山県の県境付近にある*1黒部ダム一帯の観光地域は、立山黒部アルペンルートと呼ばれている。長野側の信濃大町からトロリーバスやロープウエイなどを乗り継いで富山側に降りる(若しくはその逆ルート)のが一般的。このルートとは別に、黒部川下流から遡る黒部峡谷鉄道もあるけど、これは普通は黒部ダムまでは行けずに途中の欅平止まり。
で、黒部ルートとはこの黒部峡谷鉄道終点の欅平駅から黒部川第四発電所を経由して、黒部ダムまで行く関西電力の業務用ルートを指す。このルートの見学会に当たった。
俺が当選したのは黒部ダムから下流に行くコースだったので、まずは信濃大町から扇沢までバスで行き、そこからトロリーバス黒部ダムまで行く。

このルート(関電トンネル)、トロリーバス専用に見えて実は普通のガソリン車等(許可車)も通る。当日も三菱電気ビルテクノサービスとかの車が普通に通ってた。ちゃんとゲートもある。


黒部ダム駅に到着。天の邪鬼な俺はそのまま改札を通らないで登山者出口に行ってみたところ、トイレの脇を通ってトンネルをくぐると突如山の中(ガレ沢)に出た。観光客もいないしセミの鳴き声も聞こえない。実はこのあとの見学会よりも感動した。


そのあと正規の改札から出て、ダム見学。「黒部の太陽黒四ダム」とはよく言ったもんで、迫力満点。ハウエルバンガーバルブからは10m^3/minの観光放水中で、虹が架かって見えた。


時間になり、トロリーバス黒部ダム駅から奥へ進む。トンネル内でバスに乗り、関電ロゴ*2入りのヘルメットを被って黒部川第四発電所へGO!
このトンネルは黒部トンネルと呼ばれ、関電トンネルと接続している。ただし関係者以外立ち入り禁止。黒部ダムからはこのトンネルの他に、発電用の送水管が2本下流に向かって地中を伸びている。


途中、タル沢横坑から外に出て山を見る時間があった。残念ながら俺はどの山がなんという山なのかさっぱり分からなかったけど、横にいた人に聞いてみたところ「この方角から剣岳を見るのはすごく難しい」と言われた。どうやら剣岳らしい。
欅平から黒部ダムへ行くには普通、黒部川沿いの旧日電歩道・水平歩道を通る登山ルートを歩くことになるんだけど、この歩道が断崖絶壁にへばり付くような道で超厳しいらしい。で、その途中にある3河川の合流地点を「十字峡」と呼び、このタル沢横坑からちょっと谷を下ったところにあるんだって。


その後再びバスに乗り、作廊谷からインクラインに乗車。まぁ普通のケーブルカーですな。速度遅いけど。
作廊谷には関西電力の宿舎があり、食料の運搬なども行っていた。逓送便と呼ぶらしい。



で、降りると黒部川第四発電所。ここで昼食を取り、発電所見学。当日は残念ながら発電機は回っていなかったけど、シャフトとかを間近で見ることができた。
この発電所は施設全体が地下200m(ただし海抜869m)に埋まっており、普段は完全無人運転*3下流宇奈月から遠隔制御している。施設のあちらこちらに日立のライト付き監視カメラが設置されていた。こんな山奥の地中深くで機械が勝手に電気を起こし続ける様子は、想像するとちょっとシュールだと思った。そういえば、映画「ホワイトアウト」でもこんな感じだった。
昼食中、関西電力職員の方が見学会に参加していた子供に「自由研究に役立ててください」と資料を配っていた。

昼食後、「上部軌道」と呼ばれる線路をバッテリーカーで下る。発電所を出たあたりが、2002年の紅白で中島みゆきが「地上の星」を歌った場所。職員の方に聞いたところ、ここから関電の発電制御用光ケーブルで長野の扇沢まで電送し、そこからNHKのSNGで生中継したんだって。発電所は普段無人で電源容量があんまり大きくないので、停電しないように苦労したらしい。


その後仙人谷付近で橋を渡り、トロッコを一旦停止させて仙人谷ダムの見学。ここも普通は旧日電歩道しかルートがないので、さっきのタル沢と同じくおいそれとは見られない。ダム付近に登山者がいたので手を振ってみたけど、振り返してはくれなかった。

ロッコはさらに下り、高熱地帯トンネルを通過。このトンネル掘削は吉村昭が「高熱隧道」という名前で小説化している。硫黄の臭気がすごい。昔は160℃を越える高温だったけど、今は発電用送水管の設置などで40℃位なんだって。ちなみにトンネルの一部は素堀のままなんだけど、別に技術的理由ではなくて「その方がお客さんに喜ばれるから」らしい。事実、きちんとボックスカルバートが設置されていた場所も多かった。

で、欅平の上部駅に到着。ここからはエレベーターで200m下り、黒部峡谷鉄道欅平駅(下部)に向かう。このエレベーターはバッテリートロッコをそのまま乗せて降ろせるらしい。OTIS製。エレベーターを降り、今度はバッテリー車ではなく電気機関車に牽かれながら欅平駅に到着し、見学会は解散。お疲れ様でした。

*1:正確には富山県

*2:ちなみにこのロゴは電圧のVと電流のAを併せたものなんだそうだ

*3:当日は点検の為に何人か職員がいた